サイクリストが見た、世界の自転車まちづくり・地域づくり
ドイツで一番自転車が使える街、ミュンスターの自転車道
2025年10月11日
「ドイツで一番自転車が使える街」と言われるミュンスターは、中世の街並みが残る美しい都市です。
市の中心部は一般車両の進入が禁止されており、歩行者・自転車・バスのみが通行できます。
人口約30万人のこの街には、およそ50万台もの自転車があるといわれています。つまり、市民一人あたり2台の自転車を所有している計算になります。
自転車関連施設の中でも、駅前駐輪場と並んでこの街の象徴的存在となっているのが、旧市街地を一周する全長約4.5kmの緑の回廊「プロムナード」です。
下の地図で緑の線で示されている部分が「プロムナード」で、もとは旧市街を囲む城壁と堀があった場所です。
なお、左側の星形に見える部分は大学です。
OpenStreetMapの「サイクリングマップ」に藤本追記
「プロムナード」は並木に囲まれており、中央には自転車専用道が整備されています。多くの自転車が時速20kmほどのスピードで走っており、その両側には歩道も設けられています。
ミュンスターでは「プロムナード」以外にも、市街地の至るところに自転車道が整備されています。
次の写真は、車道側に設けられた自転車道の例です。
「日本以外では自転車は車道を走るのが当たり前」とよく言われますが、実際のところドイツでは歩道を分割した自転車道も多く見られます。やはり自転車道のスペース確保には苦労しているのでしょう。
次の写真は、歩道を色分けした自転車道です。ミュンスターでも、およそ半数の自転車道はこのように歩道を分けて作られています。
ただし、日本の歩道上の自転車通行帯とは異なり、ドイツでは街中の自転車道は原則として片側通行です。道路の右側のみを走行し、交差点の手前では車道側へ寄る構造になっていることが多いです。
日本のように双方向通行で交差点手前に来ると歩道といっしょになってしまい、自転車が歩行者の中に突っ込んでしまうような状況はありません。
「歩道上を走る自転車は車から見えにくく、交差点で突然飛び出す形になり、それが事故の原因になる」とされているため、交差点手前で車道側に寄せることで、自動車からの視認性を高め、安全性を確保しているのです。
また、日本では、歩道を分けた自転車通行帯は、歩行者も自転車もほとんどその区分を意識せずに結局混在してしまっています。
しかし、ドイツでは、歩行者も自転車もその区分をきっちり守っています。
次の写真では、交差点の自転車横断部分が赤く塗り分けられています。
また、2段階左折(日本の右折に相当)を行う自転車の待機スペースも設けられており、安全でスムーズな走行を支えています。
通勤時間帯には非常に多くの自転車が走っており、信号待ちでは自転車の渋滞が起こることもあります。
また、狭い道では車道の中央に自転車マークが描かれ、「自転車優先道路」として指定されている場所もあります。
街の各所には、逆U字型のパイプを地面に埋め込んだ駐輪スペースが整備されています。
ヨーロッパではこのような、逆U字型のスタンドに自転車を立てかけ、U字ロックなどで固定するタイプの駐輪方式が主流です。