サイクリストが見た、世界の自転車まちづくり・地域づくり

ドイツのヴェーザー川サイクリングルートを走ってきた

2025年10月19日

 2022年、ドイツのヴェーザー川サイクリングルートを走りました。
 ヴェーザー川サイクリングルートは、ハン・ミュンデンからクークスハーフェンまで続く約620kmのコースです。ドイツのADFC(全ドイツ自転車クラブ)などが実施するアンケートでは、毎年ドイツ国内で1位・2位を争う人気のサイクリングルートとして知られています。

2018 ADFC-Travelbike Bicycle Travel Analysisより


 上の図を見ると、ドイツでは川沿いを源流から河口まで走るルートが人気であることがわかります。短いものでも約310km、バルト海サイクリングルートに至っては全長9,000kmに及びます。日本のサイクリングルートとは距離の桁が違います。ドイツでは長期休暇が取りやすいこともあり、このようなルートを1〜2週間かけて走るのが一般的です。

 私はこのとき、デンマークから南下してドイツに入り、ハンブルクなどを経て、フェルデンの街でヴェーザー川サイクリングルートに合流し、ハン・ミュンデンまでの約320kmを4日間かけて走りました。
 ヴェーザー川沿いには、「ブレーメンの音楽隊」で知られるブレーメン以外は小さな街が多く、有名な観光地はほとんどありません。それでもこのルートが高い人気を誇るのは、サイクルツーリズムならではの魅力があるからです。一般的な観光とサイクリングでは、楽しみ方の基準が異なるのです。


 サイクリングルートは、自動車の多い道をできるだけ避け、自転車道や交通量の少ない道をつなぐように設計されています。次の図はルートの一部を拡大したもので、幹線道路に比べるとかなり遠回りになっていることがわかります。川沿いの景色をゆっくり楽しみながら、街に立ち寄り、観光や買い物も楽しめるように工夫されています。

OpenStreetMapより

 まずはフェルデンの街からスタートしました。次の写真はフェルデンの市庁舎で、ドイツらしい美しい街並みが印象的です。


 ルートの多くは、農家や牧畜を営む民家が点在する農村地帯を通ります。立派な家屋が多く、なかには茅葺き屋根の家も見られました。


 自転車の休憩所も整備されており、サイクリストに優しい環境です。


 ニーンブルクでは、小さな街ながらサイクリストや地元の人々で中心部が賑わっていました。


 途中、宿泊したキャンプ場では、カーゴバイク(荷物運搬用自転車)で旅をしている人の姿もありました。


 ドイツではサイクリングを楽しむ人の多くが高齢の方です。


 しかし、家族連れもよく見かけます。日本で休日にビワイチ(琵琶湖一周サイクリング)を走っているときと同じくらい、多くのサイクリストとすれ違いました。ロードバイクにサイクルジャージ姿の人もいますが、割合としては少数派です。また、e-Bike(電動アシスト自転車)の普及率は非常に高く、全体の7割ほどに達している印象でした。


 「ハーメルンの笛吹き男」で知られるハーメルンの街もルート上にあります。小さな街ですが、童話の世界を感じさせる雰囲気です。


 写真は「笛吹き男」の銅像です。


 ルートの途中には一部激坂もありますが、全体としてはほぼ平坦です。ただし、未舗装の道は一部あります。


 橋を渡ってハン・ミュンデンの街に入り、ゴールとなります。


 ドイツらしい木組みの家々が並ぶ、美しく落ち着いた街並みでした。

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